丸森常設展Ⅱ『軍盃(ぐんぱい)』
丸森常設展Ⅱ 大湫コミュニティーコレクション
軍盃(ぐんぱい)
国民皆兵であった時代、兵役を終え無事故郷に帰還することは誰しも嬉しい事であった。出征前に送り出された地域やお世話になった方々に、無事除隊され帰ってきたという報告とお礼の意を込め宴を開き、記念品を配った。その中でも小さな盃(酒器)はかなり多く作られた。
古くは日清の戦いから始まった習慣のようだが、日露の戦いでは国家挙げての戦勝ムードの中、現存する物も多い。以降、大正・昭和と引き継がれるが、大平洋戦争ではこうした余裕もなくなり、次第に行なわれなくなる。
明治の頃は日章旗と連隊旗や、日の丸と海軍旗を交差したものが多く、昭和中期からは割れにくい小型で厚みのある猪口タイプが多い。地色が着き美しく、デザインも千差万別である。
今回の展示は、大湫宿澤瀉屋(面高屋)=水野家に伝わった軍盃である。「征露凱旋紀念」「歩兵第六連隊 満期紀念」「満州派遣凱旋紀念」「山東出兵記念」「支那事変記念」や、「水喜(水野喜一)」「水野忠義」などの水野家の人々、あるいは「則武」「小木曽」「今井」など、ゆかりの家名が入ったものが見られる。大湫宿のその後の人々の生活を伝える、貴重な資料である。